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美容室の開業資金はいくら必要?費用の内訳と運転資金

美容室の開業資金は、1人・10坪で700万〜1,000万円がひとつの目安です。ただし、物件や内装で大きく変わります。設備資金と運転資金の内訳、居抜きとスケルトンの違い、必要額を1枚の資金表にまとめる方法を整理します。

約8分

美容室の開業資金は、1人・10坪の小さな店舗で700万〜1,000万円がひとつの目安です。ただし、この金額をそのまま自分の必要額にはできません。店舗の広さや席数、物件の状態によって必要額が変わるからです。設備資金を見積りで固め、売上が安定するまでの運転資金を加える。この順番で考えると、自分のお店に必要な金額が見えてきます。

この記事でわかること

  • 美容室の開業資金の目安と、1人で開業する場合の考え方
  • 居抜きとスケルトンで、開業資金がどう変わるか
  • 設備資金と運転資金の内訳と、内装費の決め方
  • 必要な資金と調達する資金を1枚にまとめる方法

J-Net21の美容室開業ガイドでは、開業資金の目安として次の例が紹介されています。

店舗の規模開業資金の目安
1人・10坪700万〜1,000万円
3人・30坪1,500万〜2,000万円

ただし、居抜きかスケルトンか、内装をどこまで作り込むかによって金額は大きく変わります。

日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査では、開業費用について次の結果が出ています。

項目結果
開業費用の平均値975万円
開業費用の中央値600万円
250万円未満の割合20.1%
250万〜500万円未満の割合21.7%

平均値は975万円ですが、500万円未満の開業が4割を超えています。一部の大きな開業が平均を押し上げているため、中央値は平均値より低くなります。

この調査は、日本公庫が2024年4月から9月に融資した企業のうち、融資時点で開業後1年以内の企業が対象です。美容室だけの数字ではありません。

平均額は参考になりますが、そのまま自分の必要額にはできません。

作りたい店舗をいくらで実現できるか。売上が安定するまで、いくら残しておくか。

この二つを分けて考えます。

1人で美容室を開業する場合、J-Net21の例では1人・10坪で700万〜1,000万円が目安とされています。スタッフを雇う店舗より席数や面積が小さくなるため、美容室の開業資金は抑えやすくなります。

ただし、1人で営業するときは、次の二つを先に確認してください。

  • 売上の上限は、自分が施術できる時間で決まります。 席数を増やしても、1人で対応できる客数を超えて売上は伸びません。席数やシャンプー台の数は、自分の予約の入り方に合わせて決めます。
  • スタッフの給与はかかりませんが、自分の生活費はかかります。 個人事業主の場合、生活費は店舗の経費とは別に確保する必要があります。

1人の美容室は、開業資金を抑えやすい一方で、自分が休めば売上も止まります。そのため、設備にかける金額だけでなく、売上が少ない月でも家賃と返済を払えるだけのお金を手元に残しておくことが大切です。

この記事の後半にある資金表の記入例も、1人で営業する美容室を想定しています。

美容室の開業資金を大きく左右するのが、物件の状態です。

  • 居抜き物件:前の店舗の内装や設備が残っている物件です。使える設備が多ければ、内装工事や設備の費用を抑えられる可能性があります
  • スケルトン物件:内装や設備がなく、建物の骨組みに近い状態の物件です。レイアウトを自由に決められる一方、内装工事や給排水・電気の工事がすべて必要になります

居抜き物件なら必ず安くなる、というわけではありません。残っている設備が古ければ、修理や入れ替えの費用がかかります。前の店舗の造作や設備を引き継ぐときに、その代金を支払う場合もあります。

日本政策金融公庫の「創業の手引+(美容版)」でも、居抜き物件の場合は、譲り受ける造作・設備の価格の内訳と、その価格が妥当かを確認するよう挙げられています。

居抜きかスケルトンかは、物件の家賃だけでなく、工事と設備の見積りまで含めた総額で比べてください。

設備資金は、お店を開ける状態にするまでのお金です。運転資金は、開業後も営業を続けるためのお金です。日本政策金融公庫の創業計画書でも、この二つを分けて記載します。

図で整理

設備資金

物件・内装・設備など、開店までに使うお金

運転資金

家賃・給与・材料費など、営業を続けるお金

必要な開業資金

見積りと月ごとの資金繰りから計算する

生活資金は店舗の運転資金とは分け、事業主本人が生活できる金額を別に確保します。
  • 物件取得時の保証金、礼金、仲介手数料
  • 内装・外装・看板工事
  • 給排水、電気、空調などの工事
  • セット椅子、鏡、シャンプー台、給湯設備
  • レジ、POS、予約システム、パソコン
  • 家具、備品、電話・ネットワーク工事

美容室では、見た目の内装だけでなく、給排水や電気容量の工事が金額を押し上げることがあります。物件の契約前に内装業者などへ相談し、工事範囲と追加費用が発生する条件まで見積りで確認します。

  • 家賃・共益費
  • スタッフの給与・社会保険料
  • 材料費、店販商品の仕入代金
  • 水道光熱費
  • 予約サイトや広告の費用
  • POS、会計ソフトなどの利用料
  • 借入金の返済に備える資金

個人事業主の場合は、事業主本人の生活費も別に確保します。生活費は会計上の人件費にはなりませんが、売上が安定する前にも必要です。店舗のお金と分けて、手元に残す額を決めておきます。

内装の希望を先に積み上げると、開業後の運転資金が残らないことがあります。次の順番で考えると整理しやすくなります。

図で整理

使える総額

自己資金と、現実的に調達できる金額

残しておくお金

運転資金と、事業主本人の生活資金

その他の費用

物件取得費・美容器具・システムなど

内装の上限

優先順位をつけて、この範囲に収める

先に残すお金を決めると、開業後の営業に必要な資金を内装へ使い切ることを防げます。
  1. 自己資金と、現実的に調達できそうな金額を確認する
  2. 開業後に残す運転資金と生活資金を決める
  3. 物件取得費、設備、システムなどの必要額を並べる
  4. 残った範囲で内装の優先順位を決める

開業後にお金が足りなくなると、広告を止めたり、材料の仕入れを抑えたりすることになります。すると、売上を作る行動そのものが制限されます。

内装を抑えることは、理想を諦めることではありません。席数や店舗面積、居抜き物件の利用、設備を入れる時期まで含めて、営業を続けられる店舗を設計するということです。

運転資金の目安として、日本政策金融公庫の「創業の手引+(美容版)」では、事業開始後の運転資金として「半年程度の赤字補てん資金等」を準備しているかを確認項目に挙げています。開業してすぐに売上が安定するとは限らないためです。

ただ、「何か月分」という目安だけでは、自分のお店に足りるかどうかは分かりません。開業から売上が安定すると見込む時期まで、次の数字を月ごとに並べます。

図で整理

来店・売上

施術をして、売上が発生する

決済会社など

カード・予約サイトの入金を待つ

後日入金

決められた日に銀行口座へ入る

その間にも、支払日はやってきます

家賃・給与・材料費・広告費・借入金の返済

月末残高だけではなく、入金日より前に家賃や給与などの支払日が来ないかを確認します。
  • 予想客数と客単価から計算した売上
  • 現金、カード、予約サイトなどの入金時期
  • 家賃、人件費、材料費、広告費などの支払時期
  • 借入金の返済開始時期と返済額
  • 月末に残る現預金

キャッシュレス決済や予約サービスの売上は、来店日より後に入金されることがあります。売上が出ていても、支払日に使える現金が足りない場合があります。

これは、利益と手元のお金が同じではないためです。黒字になる計画だけでなく、毎月の支払日に現金が残る計画になっているかを確認します。

最初から精密な計画書を作る必要はありません。まず、必要な資金と調達する資金を一つの表にします。

ここでは、1人で営業する小さな美容室を想定した記入例を示します。**金額は書き方を説明するための架空の数字です。**実際の金額は、見積りと月ごとの資金繰りから出してください。

項目金額根拠になるもの
物件取得費(保証金・礼金・仲介手数料など)150万円物件の募集条件、契約書
内装・設備工事400万円内装業者の見積書
美容器具・備品150万円メーカー・販売店の見積書
システム・開業手続・広告50万円見積書、利用料金表
運転資金150万円月ごとの資金繰り表
合計900万円
項目金額確認すること
自己資金200万円通帳で、貯めてきた経緯を説明できるか
家族からの援助(贈与)50万円贈与か借入かを明確にしたか
家族や知人からの借入0万円返済の条件を決めたか
日本政策金融公庫からの借入希望額650万円開業後の利益から返済できるか
その他の金融機関からの借入希望額0万円
合計900万円

二つの表の合計は一致させます。さらに、通帳、見積書、契約書などで各金額の経緯や根拠を説明できる状態にします。

自己資金と家族のお金は、同じ手元資金に見えても性質が違います。誰のお金なのか、返済義務があるのかまで整理してください。

個人事業主の場合、事業主本人の生活資金は、この表とは別に手元へ残しておきます。

必要な資金と、返せる借入額を一緒に整理したい方は、創業融資支援サービスの内容をご覧ください。

創業融資では、借りたい金額だけを決めても計画は完成しません。申込の前に、次の内容を自分の言葉で説明できるかを確認します。

チェックリスト

  • これまでの美容業の経験を、年数や担当した客数などで説明できる
  • どのようなお客様へ、何を提供するのかを決めている
  • 席数、客単価、回転数、営業日から売上を計算している
  • 材料費、人件費、家賃などの費用を見積もっている
  • 設備資金と運転資金の内訳を、見積書などで示せる
  • 自己資金を準備してきた経緯を、通帳で説明できる
  • 現在の借入と、開業後の返済負担を把握している

融資の可否は、この記事だけで判断できるものではありません。ただ、見積りと月ごとの資金繰りがあれば、「いくら借りたいか」だけでなく「なぜその金額が必要か」を説明できるようになります。

私たちは、開業資金を借りること自体を悪いことだとは考えていません。設備資金と運転資金の両方を借りても、開業後の利益から返済できる見込みがあれば問題はありません。手元にお金を残せるぶん、開業直後の売上が少ない時期も、広告や材料の仕入れを止めずに済みます。

一番避けたいのは、返せなくなって、返済のためにまた借りる状態に入ることです。借入が借入を呼ぶと、返済額が増え続け、売上を伸ばすための広告や採用にもお金を回せなくなります。

だから、借りられる額をすべて借りるのではなく、無理なく返せる額の範囲で借りてください。開業後の月の利益で、毎月の返済額を払えるか。借入額を決める前に、この一点を確かめておくことが大切です。

美容室の開業支援の内容は美容室・サロン向けのページで、創業融資の進め方は創業融資支援サービスで紹介しています。

立派な計画書を作る前に、次の三つを書き出します。

  1. 現時点で自分が用意できる自己資金
  2. 家族の資金を含め、開業に使える手元資金
  3. 物件・内装・設備について、すでに分かっている見積額

この三つを並べると、まだ見積りがない項目と、資金が不足しそうな部分が見えてきます。そこへ運転資金を加え、借入希望額を組み立てていきます。

自分のお店の場合を整理したい方は、創業融資の対象診断から、いまの状況をお聞かせください。

※掲載している金額は一般的な調査や参考例であり、個別の工事費、借入可能額、融資結果を保証するものではありません。制度や融資条件は変更されることがあるため、申込時点の公式情報をご確認ください。