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税務・経理

美容室の経費になるもの・ならないもの|勘定科目と記帳のコツ

監修:稲垣大輔(公認会計士・税理士/オントロジー会計事務所)

美容室の経費の判断、材料・家賃・予約サイトの勘定科目、家事按分、美容機器の減価償却、キャッシュレス売上と手数料の記帳を個人事業主向けに整理します。

約9分

「レシートは全部取ってあるのに、何費にすればいいか分からない」。「申告の前に通帳を見たら、売上とカードの入金が合わない」。開業して1〜3年目の美容室オーナーが、迷いやすい点です。

美容室の経費になるかどうかは、「売上を得るために必要だったか」で決まります。そして確定申告を楽にするのは、線引きの知識より、月に1回の記録です。

図で整理

総額

キャッシュレスの売上の付け方

40万円未満

買った年に全額経費にできる上限

月1回

レジ・決済・通帳を突き合わせる

40万円未満の特例は、一定の要件を満たす青色申告者が令和8年4月1日以降に取得したもの(国税庁 No.2100)

3行でいうと

  • 経費かどうかは「お店の売上のためか」と「説明できるか」で決まる
  • キャッシュレスは総額で売上、差し引かれた手数料は経費にする
  • レジ・決済・通帳を月1回並べれば、2月に慌てなくて済む

何を買ったかではなく、お店の業務のために使ったかで決まります。

図で整理

経費になる

  • カラー剤・パーマ液・店販の仕入
  • 店舗の家賃・水道光熱費
  • 予約サイト・SNS広告
  • 決済手数料・講習会の参加費
  • 借入の利息・事業税

説明しだい

  • 自宅サロンの家賃・光熱費
  • スマホ代(業務の割合)
  • 自分の髪のカラー・カット
  • 仕事中の服・メイク用品

経費にならない

  • 生活費・私服
  • 所得税・住民税
  • 延滞税・加算税・罰金
  • 借入の元本の返済
  • 生活費として引き出したお金
国税庁 No.2210・確定申告書等作成コーナー「租税公課」をもとに整理。個別の判断は事実関係で変わります

国税庁は、必要経費を「売上に直接かかった費用」と「その年の業務上の費用」の二つと説明しています。だから同じシャンプーでも、お店で使えば経費で、自宅で使えば経費ではありません。

迷う支出は、「何のために使ったか」「プライベートにも使っていないか」「それをレシートや予約記録で後から説明できるか」の三つで考えましょう。記録がなければ、業務で使ったものでも説明が難しくなります。

個人事業主の美容室では、1つの口座やカードで、お店の支払いと生活費の両方を払っていることがよくあります。生活費として引き出したお金は経費ではないので、会計ソフトでは「事業主貸」として経費と分けて記録します。

借入の元本の返済は、通帳から毎月出ていきますが、経費になるのは利息だけです。「経費は多いのに、お金が残らない」と感じる理由の一つがここです。借入の考え方は美容室の開業融資で日本政策金融公庫を使う前にで整理しています。

自宅の一室で営む場合、家賃や光熱費はお店と生活の両方に関係します(家事関連費)。国税庁は、経費にできるのは「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます」と説明しています。家賃なら施術スペースの床面積、光熱費なら営業時間などで割合を決め、間取り図に印を付けて残しておきましょう。なお、生計を一にする家族に家賃を払っても、原則として経費になりません。

オーナー自身の髪のカラーや服は、一律には言い切れません。新しい薬剤を自分の髪で試す、作品撮りのモデルになる、といった使い方なら説明しやすくなります。休みの日にも着る私服や、プライベートで行く他店のカット代は説明しにくいものです。説明が思いつかないものは、無理に経費にしないことをおすすめします。

同じ種類の支出は、毎年同じ科目に入れてください。 科目の名前は会計ソフトで少し違っても構いません。年によって科目が変わると、材料費が増えたのか、入れ先を変えただけなのかが分からなくなります。

支出の例勘定科目の例ポイント
カラー剤・パーマ液・店販商品仕入年末に残った店販在庫は棚卸し
タオル・ケープ・ペーパー類・練習用ウィッグ消耗品費10万円未満の備品もここ
店舗の家賃・共益費地代家賃自宅サロンは按分
電気・ガス・水道水道光熱費シャンプー台の給湯で大きくなりやすい
電話・インターネット・スマホ通信費私用もあれば業務の割合で
予約サイト・SNS広告・ショップカード広告宣伝費新規客数と月ごとに並べる
キャッシュレス決済の手数料・振込手数料支払手数料入金額から差し引かれている
スタッフの給与/業務委託の報酬給料賃金/外注費雇用か委託かは働き方の実態で判断
講習会の参加費・技術書研修費・新聞図書費交通費は旅費交通費
店舗の火災保険・賠償責任保険損害保険料自宅部分があれば按分
事業税・お店の固定資産税・印紙税租税公課所得税・住民税は入らない
借入金の利息利子割引料元本の返済は経費ではない

店販商品は、12月にまとめ買いして棚に残った分がその年の経費から外れます。売上原価は「年初の在庫+その年の仕入−年末の在庫」で出すからです。12月末に、数と仕入れ値をメモしておきましょう。

広告宣伝費は、月ごとに見る価値が特に高い科目です。広告を出した月の新規のお客様の数と並べると、続ける広告と見直す広告を分けられます。年に1回の確定申告の数字では、この判断はできません。

業務委託の美容師への報酬は外注費として扱うことが多いです。ただし、雇用か業務委託かは契約書の名前ではなく働き方の実態で判断されるため、契約の前に専門家に確認してください。

カットモデルへの謝礼は現金で渡すことが多く、レシートが出ません。日付・相手・金額・目的をメモに残してください。

1つ10万円を超えると、買った年に全額は経費にならないことがあります。

図で整理

10万円未満

使い始めた年に全額

10万〜20万円未満

一括償却資産として3年で3分の1ずつ

10万〜40万円未満

要件を満たす青色申告者は特例で全額(年300万円まで)

それより大きい

耐用年数に応じて減価償却

国税庁 No.2100(令和8年4月1日現在法令等)。令和8年3月31日までの取得は、特例の上限が30万円未満

セット椅子やシャンプー台のように何年も使うものは、原則として使える年数に分けて経費にします(減価償却)。ただし、金額によって扱いが変わります(国税庁タックスアンサー、令和8年4月1日現在法令等)。

1つあたりの取得価額経費にするタイミング
10万円未満(または使える期間が1年未満)使い始めた年に全額
10万円以上20万円未満一括償却資産として、3年間で3分の1ずつ
10万円以上40万円未満(一定の要件を満たす青色申告者)中小企業者等の少額減価償却資産の特例で、使い始めた年に全額(年間の合計300万円まで)
上記より大きいもの耐用年数に応じて減価償却

中小企業者等の少額減価償却資産の特例は、令和8年4月1日以降に取得したものから上限が40万円未満に引き上げられました。令和8年3月31日までに取得したものは、30万円未満が上限です。特例の期限は令和11年3月31日までです。インターネット上には「30万円未満」のままの記事も多いので、買った日付で確認してください。取得価額に消費税を含めるかどうかは、経理の方式(税込経理か税抜経理か)で変わります。

開業時の内装工事は金額が大きく、何年にも分けて経費にするものが中心です。「借りて払った内装費が、1年目に思ったほど経費になっていない」のはこのためです。設備資金の目安は美容室の開業資金はいくら必要?で整理しています。

通帳に入った金額ではなく、お客様が払った総額を売上にします。

図で整理

お客様のお会計(POSレジ)

施術した日の売上 10,000円 → 売上(総額)として記録

決済サービス

手数料 300円を差し引く → 支払手数料(経費)として記録

お店の口座

入金 9,700円。入金されるまでは売掛金 → 入金日に売掛金を消す

金額はサンプル(架空)です。決済サービスの手数料率や入金日は、契約によって違います。月末をまたいで入金される分は、入金されるまで売掛金として残します。

決済サービスからお店の口座に入るのは、手数料を差し引いた後の金額です。これをそのまま売上にすると、次のようになります。

記録のしかた売上支払手数料利益
正しい記録(総額で売上、手数料は経費)10,000円300円9,700円
入金額で売上を記録9,700円0円9,700円

※金額はサンプル(架空)です。手数料の率は、決済サービスや契約によって違います。

利益は同じに見えます。しかし、売上が実際より少なく、手数料が帳簿から消えます。その結果、POSレジの売上と合わず、融資の相談で使う売上高も小さくなります。手数料が毎月いくらか分からないので、決済サービスを見直す判断もできません。

もう一つ、12月の終わりに施術して1月に入金される分は、12月の売上です。入金されるまでは「売掛金」として残します。入金日で付けると、12月末の売上が翌年に回ります。

決済サービスの入金明細には、売上・手数料・入金額が分かれて載っています。この明細を、POSレジの売上と通帳の入金と、月に1回並べてください。レジと決済の売上総額が合うか。決済の入金額と通帳が合うか。この2か所で、売上の漏れと手数料の漏れの両方に気づけます。

毎月の売上と入金の突き合わせを、まかせたい方へ

おみせ経理では、美容室の記帳と月次の試算表づくりを、レジ・決済サービス・通帳の数字を突き合わせるところから支援しています。サービスの内容は美容室の月次経理で、料金は料金ページでご確認いただけます。

1年分を2月にまとめるより、毎月上旬に先月分を締めるほうが早く終わります。

図で整理

01

レシートを入力

科目を付ける。謝礼はメモから

02

レジと決済を照合

POSの売上=決済の売上総額か

03

決済と通帳を照合

差額は手数料と売掛金

04

生活費を分ける

混ざった支払いは事業主貸へ

05

前月と並べる

材料費・広告費・手数料を比べる

1回あたりの作業はこの5つ。合わない理由も、1か月前ならまだ思い出せます

個人事業主の確定申告は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです。この時期に1年分をまとめると、5月のレシートが材料か自宅用か思い出せません。カードの入金と売上がどの月でずれたのかも分かりません。店販在庫を数えていなければ、売上原価も出せません。そのうえ、申告作業は3月の繁忙期の予約と重なります。

月に1回締める本当の価値は、最後の「前月と並べる」にあります。材料費の割合が上がっていないか。広告費をかけた月に新規のお客様は増えたか。融資のときに作った計画書と実績を並べれば、計画より売上が少ない月が続いたとき、返済が苦しくなる前に手を打てます。

お店用の口座とカードを1つずつ作り、お店の支払いはそこからだけ払う。これだけで「生活費を分ける」手間はかなり減ります。

青色申告をするには「青色申告承認申請書」を出しておきましょう。期限は原則として青色申告をしたい年の3月15日まで、新たに開業した場合は業務を開始した日から2か月以内です。

青色申告特別控除は、複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を付けて期限内に申告すると55万円です。さらにe-Taxで申告するか優良な電子帳簿保存を行うと65万円になります。それ以外の青色申告者は10万円です。期限内の申告が要件なので、月次で帳簿ができていると安心です。帳簿と書類は、原則として7年間保存します(5年でよい書類もあります)。

生計を一にする家族に払う給与は、原則として経費になりません。青色申告者は、届出書を出すなど一定の要件を満たすと「青色事業専従者給与」として経費にできます。家族に受付を手伝ってもらう予定があるなら、開業届と一緒に確認してください。

チェックリスト

  • 先月分の決済サービスの入金明細を1枚出す
  • 売上の総額・手数料・入金額の3つに分けて書き出す
  • POSレジの売上と、通帳の入金と並べて合うか見る
  • お店用の口座とカードを1つずつに決める
  • 12月末に店販在庫を数える日を、予定に入れておく

美容室の月次経理を、仕組みから整えたい方へ

おみせ経理では、個人事業主の美容室の記帳・月次の試算表から確定申告まで、毎月の経理が回る仕組みづくりを支援しています。どの経費をどう分けるかで迷う前に、記録が自然にそろう流れを一緒に作ります。サービスの内容は美容室の月次経理、料金は料金ページをご覧ください。

同じです。スタッフがいないぶん給料賃金はありませんが、材料、家賃、広告費、手数料の考え方は変わりません。1人のお店は、お店の支払いと生活費が同じ口座から出ていることが多いので、事業主貸で分けることが特に大切です。

一律には言えません。新しい薬剤を自分の髪で試す、作品撮りのモデルになるなど、業務との関連を説明できる場合は経費として扱える余地があります。プライベートで他店に行ったカット代など、説明が難しいものは無理に経費にしないことをおすすめします。

原則として、使える年数に分けて経費にします。ただし、10万円以上20万円未満なら3年で均等に経費にする方法があります。また、一定の要件を満たす青色申告者は、令和8年4月1日以降の取得なら40万円未満のものを年間300万円まで、使い始めた年に全額経費にできます。

※この記事は、個人事業主の美容室を前提に、令和8年4月1日現在の法令等をもとに一般的な考え方を整理したものです。個別の支出が経費になるかどうかは、事実関係によって判断が変わります。制度の要件や期限は改正されることがあるため、申告の時点で国税庁の最新情報をご確認ください。